自然とテクノロジー~これらからの地域開発のあり方について~

 日本中が地域開発、地域振興を考えている時代。大阪府や兵庫県で地域の未来像の検討に参加しているが、少子高齢化、地方分権などとともに、最近必ず出てくるキーワードがある。中心市街地の活性化だ。

 震災の被害を受けた神戸市では、住宅地の復旧は進んだものの、三宮や元町など中心市街地の立ち直りが遅れている。これは今後の都市問題を象徴しているのではないか。

 高度成長は田舎から都市への人口流入に支えられていた。都市に人が集まるのは当然のことだった。人が増えれば仕事が増え、町がにぎわい、さらに人が増えるという好循環が生まれる。しかし、急激に人口が増えると道路や学校などのインフラ整備が追いつかない。これまでの都市政策は、いかに人口の急増を抑えるかが最大の課題となっていた。

 ところが、神戸では震災で人口が数万人減少した。すると仕事が減り、町の魅力が減り、人がさらに減るという過疎の町と同じ悪循環に陥った。神戸市は初めて人口減少の深刻さに気付き、人口確保を第一の命題と考えるようになった。今後、日本全体の人口が減ると、日本中の都市が同じ問題に直面する。間もなく本当の都市間競争の時代、人口を奪い合う時代がやってくるだろう。

 神戸市は人口確保のために何をしようとしたか。まず町を出ていった人に帰ってきてもらうことを考えた。しかし、震災後4年がたち、それぞれに新しい生活があり、呼び戻すのは用意でない。新しい人や企業を呼ぼうとしても、神戸に来てもらう理由が見つからない。よそより地価が安い、よそより便利というだけでは都市間競争に勝てないことが分かった。神戸にしかない魅力とは何か。それを今、真剣に考えているところだ。

 都市の魅力を考える際のポイントは4つある。第一に地形、天候などの自然環境。次ぎに動植物などの生態系。3つ目は道路、公共施設、商店などの都市環境。最後に歴史や町の雰囲気などの文化環境だ。

 イタリアのボローニャ近くにベネトンという町がある。今ではブランドで知られているが、かつてはファッション小物を扱う職人の町だった。ここの職人には何百もの色を見分ける技能が受け継がれており、その土着の文化が優れたデザインと結びついて、一流ブランドの産地に発展した。他にはない独自の文化が都市の魅力となっている。

 
 一方、大阪は「元気」を地域開発のキーワードにしている。従来の都市計画はきれいに区画分けする「プランテーション(大規模農園)型」だった。だが、ジャングルの植物がみんな元気に育っているように、大阪の活力の源は「ごちゃ混ぜ」にある。「ジャングル型」の都市計画にした方が、より一層大阪の魅力を引き出せるかもしれない。

 都市間競争を勝ち抜くには、自然にせよ文化にせよ地域に土着したものを探ることが大切だ。そして土着のものを発信するテクノロジーが必要になる。

 岡山県が全国に先駆けて情報ハイウェイ整備に取り組んだのは英断だった。新たな取引関係、新たなビジネスの創造に役立つばかりではない。革新的な情報発信の手段として活用できるからだ。

 次のステップは岡山に独特なものは何かを、真剣に考えることだ。長く住んでいると、地域の良さに気づかないことがある。阪神大震災の後、四国の高松経由で岡山に入った時、美しい瀬戸内海を見て、あらためて岡山の良さを実感した。他地域のまねでは二流、三流にしかなれない。地域のオリジナルとなるものを、もう一度考えてみるべきだ。

~岡山県商工会議所連合会通常総会講演要旨~